煽りは信用を失う!ヤフートピックスに学ぶ「人が集まるサイト運営術」

煽りは信用を失う!ヤフートピックスに学ぶ「人が集まるサイト運営術」

2010年4月に発行された本、奥村倫弘さんの「ヤフートピックスの作り方」。
染谷昌利さん、イケダハヤトさんの世界一やさしいアフィリエイトの教科書1年生でも紹介されていた本です。

ヤフートピックスのタイトルの文字数にはじまり、メディア全体の在り方が綴られています。

この本をおすすめしたい人はこんな人。

  • タイトルが長くなりがちでまとめれない
  • 反応がなくて運営が辛い
  • ヤフートピックスが取り上げやすいものを知りたい
  • 人を集めるサイト運営が知りたい

最初は退屈なところが正直ありましたが、読むにつれて「ハッ」とさせられる部分が多かったです。
参考になった点を引用しながらご紹介します。

ヤフートピックスの概要

1996年7月に始まったヤフーニュースは、約150の報道機関社や出版社と繋がり、毎日3500本以上配信されています。
PV数は月間45億PV、UUは6970万です。※2009年10月データ
ニュースでありながら、自社での取材は行いません。

ヤフーニュースの中から選び抜かれたニュースがヤフーのトップページの一等地であるトピックスを飾ります。

ヤフーニュースの中から選び抜かれたニュースがヤフーのトップページの一等地であるトピックスを飾ります。

どのニュースをどんなテキストで掲載するか決めるのがヤフートピックスの編集者。
全て人的作業で行っており、年中無休24時間体制で運営されています。
googleでも同様のニュースサービスがありますが、機械が自動的に収集してニュースを整理しているそう。(googleらしいですね)

トップページに掲載できるトピックスの枠は8つ。
8記事しか掲載することができません。

そして、1記事のタイトルは13文字。
13文字という文字数には、目を動かさないで一目で分かるといった効果があります。
京都大学大学院の研究によると、一度に知覚される範囲は9~13文字だそうです。

そして、1記事のタイトルは13文字。 13文字という文字数には、目を動かさないで一目で分かるといった効果があります。 京都大学大学院の研究によると、一度に知覚される範囲は9~13文字だそうです。

ヤフートピックスの並び順は国内、地域、海外、経済、コンピューター、サイエンス、スポーツ、エンタテイメントにすることで、硬柔さがバランスよく、特定ジャンルに話題が固まることを防ぐ工夫がされています。

よく読まれるジャンルは決まっていて、だいたいこんな推移だそう。
ある日のデータが掲載されていました。

  • エンタメ 31%
  • 国内 17%
  • スポーツ 16%
  • 地域 14%
  • 経済 11%
  • 海外 7%
  • サイエンス 2%
  • コンピューター 2%

エンタメ、国内、スポーツで6割を占めています。
なんとなくわかりますね笑

13文字で記事を伝えるテクニック

13文字で記事を伝えるテクニック

  • 優先順位の低い無駄な言葉や、説明しなくてもいい言葉はとにかく削る
  • どの言葉や固有名詞にバリューがあるのかを判断
    ポテンシャルを最大限にあげる
  • 伝え手と受け手の知識と経験を共有させる
  • 余計な修飾は不要
    本当に驚きに値する記事やコンテンツは「!」が無くても驚いてくれる
  • 事実だけを伝えることが正確さや信頼性を生む
    記事の内容がタイトルに見合っていない場合、読者は「不誠実さ」を感じて離脱する

新聞とネットニュースの収入源

ネットのニュースサイトは基本的に同ページ内に表示される「広告」のPV数によって収益が左右されます。

そのためアクセスが最大になるように運営されるニュースサイトが出てくる。
「閲覧数の最大化」は「コストカット」に繋がり、取材を行わないで書かれた事実確認のない記事や、引用だけのニュースになることが多い。
「また聞きのまた聞き」といった信用性が低く「読まれればなんでもいい」という記事を生みます。
このような取材費用を掛けない低品質なコンテンツを、奥村さんはジャンクフードコンテンツと呼んでいる。

だれでもサイトが簡単に作れるようになった背景も後押し、こうしたネットニュースサイトは増えている。
子供も大人も情報を鵜呑みにせず「本当に真実か?」という視点を持つことは大事。

一方、同じくニュースを伝える「新聞」は、戸別配達で成り立っている。
日本の戸別配達率は94%を越えているそう。
そのため、閲覧数に左右されないし、読者の意向を優先することもない。
ネットニュースに比べて安定した経営になっている。

全国の新聞社や通信社、放送局138社※が加盟している「日本新聞協会」では自主的な憲法を定めており、
自らの役割を「歴史の記録者、公共的、文化的使命を果たすべき」と綴られている。※2009年12月データ

高い倫理観と社会的使命を持ってニュースは伝えられています。
そして、編集者自身が持つ内在的な価値判断で記事は作られます。
決して外在的な価値判断=PV数で運営されることはない。
こういった理念が、結果として会社への長期的な信頼と利益に繋がっている。

奥村さんは
「ジャンクフードコンテンツの収益モデルが成功、一般化してくると、
新聞やテレビなどの報道機関が作り上げてきた社会的な責任や意義が失われる。
体力のない良質なメディアの存在を危うくしてしまう」
と警鐘を鳴らしています。

実際、2016年にDeNAのWELQ(ウェルク)問題がありましたね。

もちろん良質な情報を発信しているメディアもあります。
高いクォリティを保つために有料コンテンツ化することでPV数に頼らない運用に方向転換したメディアもあるそう。

トピックスに好まれるサイトとプレスリリースについて

トピックスに取り上げられると、多くの人の目に触れるので「トピックスとして扱って欲しい」という依頼もあるそう。
しかし、トピックスは決してプロモーションに使われることは無い。
(結果として話題を更に盛り上げることはあるが)

企業は話題作りのため、有名人を起用したCMを作ったり派手なイベントを行うが、「商品自体に魅力がなければ話題にならないし、印象に残らない」と奥村さんはバッサリ。
煽ったところで内容が伴っていなければタイトル同様、信頼を失う行為らしい。

トピックスが「掲載したくなる情報」として書かれていたのはこちら。

  • 読者が求める商品やサービス
  • 企業が得意とする分野に関する知識やノウハウ
  • 「企業が自身の得意な分野に関する知識や情報を発信するためにある」という考えで作られたサイト
  • 関連サイト(記事の下に添えられるリンク)として掲載されることも十分ある
    トピックスとして取り上げたニュースを軸に知識や見識が広がるか、深まる情報発信

商品や新サービスを宣伝するためだけに作ったようなサイトはNG。

あと、意外とサイトを探しても肝心の情報が見つからない場合があるよう。
プレスリリース用の領域を設けておくと親切。

また、一般的にプレスリリースは「ビジネス文書」という認識が高く、「読みたい!」と思える文体は少ないそう。
プレスリリースを作成する方、工夫のしどころです。

強みを発信するとメリットを感じて人が集まってくる

強みや優位性を生かした得意を見つけて、発信しているサイトは多い。

  • キューピー、味の素はレシピ
  • パナソニックは家電使いこなし講座
  • マツダは車種ごとのコミュニティー

子供に向けたサイトを準備しているところもあり、大人が見ても分かりやすく便利。

消費者メリットが大きくなれば、企業のホームページ自身が魅力を増していく。
広告費用を掛けなくても自然に人が集まってくるメディアに育つ。
とっても素敵な循環が生まれます。

ECサイトも同様。
ただ商品を陳列したり、「送料無料!格安!」といった誰でもできるポイントで勝負するのは無謀。
○○という商品を取り扱うから提供できる情報を積極的に公開していくと反応する人が出てくるはずです。

単にお金儲けをするだけでなく、企業活動を通じて社会に貢献していける何かがあるからこそ、その企業には存在価値が認められるのだと思います。

最後に

毎日新聞社の元常務取締役の河内孝さんの言葉がありました。

「結局読者は自分の関心領域か、せいぜいその周辺にしか目がいかないもの」

全員が見てくれなくて当然。読んでくれなくて当然。
でも、あなたの強みを受け取ってくれる人はきっといる。
その人に語りかけるように発信し続けているといつか反応がある。

肩の力を抜いて、無理しない自然な関係。
あなたも相手も一緒に良い気持ちになれるサイト運営を目指しましょう。

機械では言語化できない、ロジックに落とし込めない価値観の紹介に取り上げられていたのが
このニュース「四つ葉のクローバー」。
とても素敵なお話です。
読んでみて下さいね。